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悲しき軽運送屋の顛末記-27 [顛末記]

私は神経質の几帳面である。血液型A型ってのは関係ないのか? 自分で言うのも「おこがましい」のだが、荷物の積み方もきちんとしていなければ気がすまない。その上、外面が良いようだ。そうは感じていないのだが、話し言葉が丁寧で礼儀正しいとされていたらしい。お客に接する時には当たり前だと思うのだが、これが長所であると同時に短所でもある。
この業界で丁寧すぎる、礼儀正しいのは嫌われ、フランクな付き合い、適当な振る舞いが歓迎される。空港にいた時もその気配は感じていた。別に同僚である会員に冷たい態度をしていたわけではないが、仕事を出す会社の事務所に数人の会員と行った時などに態度が違うと言うことで違和感を覚えたのだろう。世話になる会社の事務員に良い顔をするのは当然である。

しかし、この業界の連中はそうは思っていないらしい。電話の応対を聞いていても、「もしもし、○○さん? F運輸たどけどねぇ。今日の午前中いる? 」なんて調子だ。OKとなれば「じゃぁ、これからいくから」。これはお客にいう言葉ではない。特に代引きなどのお金が絡んでくる配達の場合、電話で確認することがあるのだ。留守では無く、つり銭が無いようにするためだ。が、私が応対するとバカ丁寧で付き合いにくい奴だと思われる。決して職種で差別をするつもりは無いが、業界内にこういう人物が居ると運送会社=粗野な人種の集まりと思われても仕方が無い。昔はこれで許されたのだろう。それなりに親しさは出るかもしれないが、感情を害する人もいるだろう。温和なしゃべり方は良いが商売で敬語の無い世界は余り聞いたことが無い。


★Photoはイメージです。

逆に、丁寧に接して文句を言う人はいない。なので、私はF社の二階、つまりパソコン配送エリアでは重宝に使われていた。やはり高額なものを買うのだから、お客の方もそれなりに扱われたいのだろう(お客様と書かないのはこのブログの性質上、自己表現の文章のためであり、決して呼び捨てにする意図ではない)。
パソコンという商品にしてもプログを読んでいる諸兄には当然と思われる、優しい扱いが要求される。何しろ精密機器なのだから。中には放り投げたり、積み方も衝撃が加わるような荒い奴が結構いるのだ。パソコンという製品の特性を知らずに作業する従業員が多い。私が丁寧なのではなく、ほかが雑なのだ。当時の話ではある。今そんな扱いをすることは無いだろう。

[こんなことがあった、その22]
その日、夜に呼び出しがあった。F社の2階からだ。こんなことは珍しい。この会社は殆ど定時である午後5:00迄で帰りなのだが、特別に私を名指しで連絡が入った。軽運送のD社からの電話ではなく、直接F運輸からである。
早速、出向くことにする。本当は食事中だったが、運送の仕事は呼ばれたらなるべく直ぐに出るがモットーだ。我が家からスムーズに走っても45分、夜の場合であるが。倉庫の2階ではそこの部長が待っていた。なにやら機嫌悪そうに。部長と言えばこの営業所では相当上だ。その人からご指名を受けたからにはなにやら大切な仕事かと、チヨット緊張気味に入っていった。

仕事は「集荷」だった。つまり指示された場所に行って荷物を回収してくるということ。たったそんなことに何故に私なのか不思議だった。運送業は夜も遅い。まだ従業員は残っているし車も空いているいるようだが、仕事なので快く引き受けることに。壊れたディスクトップパソコンの引き取りで、何やら取引先のお偉いさんの家から文句の連絡が入ったとの事。そこへ出向いて「謝ってきて欲しい」という。
この頃はよく謝罪することが多いなぁ…と思いながらも理由を聞くと、顛末記-24で書いたように家電店やショップでの販売をしていないメーカー(通販)で結局、破損していると言うことは輸送の扱いが悪いと言うことになる、と購入者は言っている。なので、言葉を選んで話せる奴を行かせろということになったのだ。そんなの誰でも出来るはず…ってF社には余りいないか。
しかし、部長は直接行きたくないのだね。それとも敬語が使えないのか??

ま、失礼が無いようにということで住所を聞いて出発した。そのほかの条件は出荷時の箱に入れて持ち帰ること。って、私がそのメーカーのパソコンがどのように箱の中に入っていたかなんて知る由もない。兎に角外箱の破損状況とそれが中身に及ぼした経緯を知りたいらしい。それなら帰ってきてから再現しても同じことだろうが、なるべくそのお偉いさんの家人にどのような状態だったかを聞いてくることと、充分の詫びを入れるようにと言うことだった。

夜の街へ飛び出した。時間にして40分…と思ったら、スポットと違い大きな会社とか工場・倉庫とではなく、宅地の密集地。住所を頼りにするが夜の暗さで目印が見えない。そればかりか店のシャッターは下りていて場所も聞けない。狭く、迷路のような道をぐるぐる探す。一時間も迷ったか。と、それまでのアパートや比較的普通の住宅地から抜け出し、広い敷地に大きな家。周りは高い生垣で中は見えないが、かなり金持ち風。「ここだな」。流石、運輸会社の部長が直接手配する上得意の住まい。なんていっていられない。人柄が悪ければ頭ごなしに怒鳴られる。覚悟を決めて門のチャイムを押し、中へ入れてもらう。庭で、でかい犬がこちらを見ている。玄関を開けて待っているその人が本人らしい。早速頭を下げて詫びるが、「いやいや」と想像していた人物とは裏腹。人当たりの良いおじさんだ。
やはり、上に立つものは出来ている。なんて勝手に感心して「物を見ると」ありゃりゃ…やることは粗雑。玄関内のフロア一杯にモニタ(当時は薄型の液晶でなく、ブラウン管の重い奴)やPC本体、ケーブル類が散乱している。箱はと言えば一番大きなものに全て突っ込んである。クッション材まで。ここで元へ戻すわけには行かない。ケーブルが全てあるかなんて私には分からない。ま、とりあえず車まで持てるだけずつ運ぶことにする。4、5回往復して薄暗い車の中へパソコンをいれ、家人に挨拶。おそらく新しいパソコンが明日届くだろうと笑顔だ。なんて愛想がいいんだろう。私ではなく壊れたPCのその人がである。んっ…最初から壊れていたらこんなに機嫌が良いだろうか、もしかしたら貴方が壊した? と疑ってしまう。原因はおそらく配線ミスか、どこかへぶつけた、または落としたかもしれない。箱の中身を復元したところで本当のところは分からないだろう。
そう、あれだけシッカリ梱包していると、そんなに簡単には壊れないものだ。いくら輸送の時に衝撃を与えたとしても。

薄暗い車内灯で確認しても箱の四隅に凹みなど無い。メーカーは初期不良で片付けるのだろうから、私の知ったことではない。後は箱詰めをして持ち帰るだけだ。が、これが大変、モニタはスンナリ入ったが本体がどう入っていたのか、キーボードとケーブルも…えーい面倒だとその箱の中に全てを放り込む。こんなパズルを夜の道端でやる気は無い。私はこのままF運輸へ持ち帰ることした。それにしてもあの家人の笑顔が妙に頭に浮かんだ。当時は訪問サポートなんて無かったんだろうか。その後のことは知らない。そこが私の文章のつまらないところ。後日談があれば完結して面白いのに。


★Photoはイメージです。

[こんなことがあった、その23]
これも「集荷」の話。またしてもご指名で。場所は茨城県、水戸に近いところだ。配達でハンコを貰って帰ってくるスポットとは違い、人との接触が長い仕事、つまり接客業に近い。会社だが、化学工場だった。そこから一応、F運輸の営業所に持ち帰り、次の配達場所へ持って行くらしい。で、私の仕事は集荷までだ。

街を走ると良くマフラーの出口に網の袋を被せている車を見かけるだろう。あれは、これから行く化学工場などに入ることがある車である。工場の敷地内は「火気厳禁」、ガス漏れなどしていて、そこへマフラーから出る火の子に引火することを防ぐためだ。
受付で行き先と社名、入庫時間を書いて入管証を貰う。その上で車をチェック。あいにく私の車には「それ」がついていない。本来なら貸してくれるところもあるのだが、あいにくここの工場は無いらしい。「ここへ来るなら、それ用の車で来い」ということか。仕方が無いのでフェンスの外の駐車場所に車を停め、台車を持って歩きでその棟へ向かう。結構広い構内だ。
ここの担当者はそっけない。お客なので敬語で応対(当然か)するが返事が…彼は無口だった。台車は1階に置いていく、荷物は4階、エレベーターは無い。普通の建物でも(たとえば団地など)5階以下でのエレベーターの義務付けは無いと聞いた。が、荷物を持っての往復はかなりしんどい。やっと積み終わり、挨拶をするためにその担当者の所に。すると「F運輸だったね。貴方の態度は気持ちがいい、名前は? これからも宜しくね。貴方の会社に電話しておくよ」…と言われても下請けだし、地元の営業所ではないので褒められてもねぇ、である。しかし、言われるだけ嬉しい。無口、無表情な彼でもこちらの態度を見ているのだ。
おのおの社風と言うものはあるのだ。F運輸も「この会社は礼儀にうるさい」と思ったから私を行かせたのかもしれない。

運送業は仕事として賃金を貰うのは当たり前として、前にも記したが、お客からの「ありがとう」「ごくろうさん」などの何気ない言葉が嬉しいものだ。それを得るにも接客の態度や言葉遣いには気をつけたいものだ。逆の立場(お客)になればそれは明白である。

●こちらもどうぞ-----------------------------------------
幼い時の私的思い出 tom room:「あえぐ夢」 懐かしき私の昭和


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コメント 2

はじめまして。
私も以前、運送の仕事をしておりました。
言葉というのは大切なもので、筆者様がおっしゃるとおり、
丁寧に話して文句をいうお客はいないのです。
言葉ひとつでクレームがクレームでなくなったり、
クレームになるようなことでもないものがクレームになる・・・
なんてこともあります。
運送業に携わる方は、気心がしれれば良い方が多いのですが
初対面やかかわりが薄いと、やはり粗野なイメージがあるのが現状。
ヤマト運輸などはドライバーの接客態度までアンケートを
とるほど、接客というものは私も大事だと思います。
これからも、がんばってください。
by (2006-05-24 00:29) 

tom-d1951

こんにちわ。
biscket様
コメント有難うございます。貴方の言うとおり、本当は良い人ばかりの業界なのですが、誤解されやすいのは社員教育をしない少数の運送会社の責任かもしれませんね。
社員も結構過酷な仕事なので、疲労のせいでしょうか、本意でなくても雑な接客をしてしまう場合もあるようですが、お客様のほうは玄関口だけの印象で判断してしまいます。文章も、言葉も難しいものだと痛感する今日この頃です。
by tom-d1951 (2006-05-24 18:57) 

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