SSブログ

「あえぐ夢」 懐かしき私の昭和 序章-2 [思い出]

どこだぁ! 周りを見渡しても、ひっそりと静まり返ったこの場所。逃げ出したくなる。いや、誰かと会いたくて孤独感に苛まれている感じだ。探し出そう。

不安と好奇心で、私は部屋へと通じる石段を一気に駆け上り廊下を走り、茶の間から何枚もの襖を開けて、次々と中を確かめた。いくらどこを探しても私一人きりだ。だからといって自分自身が見えるわけではない。私は目だ。映っているものを認識しているにすぎないのだ。何か変だ。何か…

何故か最後と分かる扉を開けると「明日香」がこちらをジーって見ている。浴衣姿だ。今は笑顔もない。一人っきりだ。しかも一筋の涙が彼女の頬を伝っていく。どうしたのだろう。私は少しずつゆっくりと近づいて行った。また逃げられてしまうのが恐かったのだ。彼女を抱きしめようとした瞬間…

頭の上でけたたましい、今度は現実的な音がした。目覚まし時計だ。今の状況が把握出来ない、放心状態の私がいる。段々覚醒していく…と、私は理解した。ボワンとした感じと妙にリアルな夢であった。「何かオカシイ」と思ったのは幼馴染みの「明日香」以外、皆今は居ない、つまり亡くなった人達が出てきた。それも何十年前にさかのぼった、しかし全員が一番その時代にシッカリと生きていた若々しさなのだ。明日香は勿論、現在は少女ではない。出てきた人達と共に年月が昔にスライドしている。幼い頃の明日香に。

私はといえば精神的には今の歳なのだが、夢の中では自然であるかのように子供を演じていた。分かっているはずの記憶をわざと押さえ込んで。そうして、それが当たり前と思い込んでいた。今日は休日、何もすることはない。急ぐことはないのだ。ゆっくり今の余韻を楽しんでいる。何か切ないような、懐かしいような、それでいて皆に会えた嬉しさを…少し目頭が潤んでくる。

このブログに書こうと決めた瞬間だ。「思い出を」。
タイトルは遠い未来の願望(夢)ではなく、眠りの中で揺れ動く(過去の)夢のように、蜃気楼が私の頭の中をよぎるような、思い出がうごめいている心の葛藤を表したものだ。[あえぐ夢]の始まりだ。


●こちらもどうぞ--------------------------------------
少し以前の失敗談 tom room:「悲しき軽運送屋の顛末記」


nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。