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悲しき軽運送屋の顛末記-24 [顛末記]

E社に常駐するようになって数ヶ月、また一人D社(協会)から会員が入って来た。そこが特別忙しい訳では無いのに人ばかり増える。新人が入っても古株が居なくならないと私の条件は相変わらずよくはならない。


★Photoはイメージです。

その頃になってE運輸会社の営業所長が軽運送の会員を呼び出した。皆を集めると「明日から仕分けを手伝って欲しい」と正式に言ってきた。それは毎朝やっているじゃん!って思っていると「異論が無ければ朝、4:30から始めてくれ」とのこと。えらく早いなぁ、起きられるか心配だ…と誰もが無言で聞いていた。この業界は朝が早いのは当たり前、ま、仕事なら仕方ないか。なんて自問自答。
だが、疑問が一つあった。周りが余りにも静かで変な雰囲気、何で聞かないんだ?金のこと。まさかそんなこと聞くのはタブーってことはないだろう。稼ぐために自営している軽運送業者が格好つけてもしょうがない。
で、私が口を開いた。「時給、幾らですか?」…暫く間があいて、当たり前だと言いたげに「仕事出してんだから、サービスに決まってるだろ!」 私は開いた口が塞がらない状態になった。

十数年前(個人業者の権利が不安定な?)の話とはいえ、運送業の下層階級だから無給で私たちを使おうというのか。他の大手運輸会社のY社やS社では、当然のように「仕分け」専門に時給を払って雇っている。これには参った。しかし、皆、黙ったまま。当たり前なのか、ここは。
古株の年寄りも甘んじてこの状況を受けようとしている。権力のなせる業なのか。

確信は無いが多分この所長、我々の仕分け手数料(時給)を自分の懐に入れていると直感した。自分が私服を肥やす為に、弱い立場にいるものに無理を強いる。
私はチャントした仕事に労働力は惜しまない。たとえ、朝4:30にここへ着くために2:30に起きることになっても。しかしこの条件は破廉恥だ。いや、犯罪だ。推測でしかないが。
結局、殆ど(と言っても5人だか)の会員は次の朝から頑張って仕分け作業を行ったらしい。
らしいと言うのは、私と新人の二人はボイコットした。少なくても「経営」だ。無給の仕事なんて無い。その代わりに仕事を出すと言うのならそれは契約違反だ。相変わらず、私は6:30にE社に車を入れることにした。

所長も強くは言えない。そりゃぁそうだろう。自分が私たちの授受する金を搾取しているのだから。でも、それを分かっているのは私くらいらしい。こちらも皆に言いふらしたりはしない。証拠が無いのだから。ただひたすら耐えるだけだ。E社の従業員まで「手伝わない奴」と言う顔で見ている。当然E社の正社員達はその分、早出の給料は貰っているのだから文句を言う奴はいない。
そのうち本当に仕事を回さなくなった。さらに所長はD社軽運送の社長に苦情を訴えた。秩序がみだされていると。皆がやっているのに二人ばかり遅く来て…D社の社長は所長の悪事を知っているのだろう。「やれないか?」と一言だけ聞いてきた。強要は出来ない、所長は横領まがいのことをしているのだから、私たちに騒がれては困るのだ。

しかし、悪い奴はどこにでもいるものだ。こんな時に「水戸黄門」か「暴れん坊将軍」でもいれば退治してくれるのに。なんて冗談を言っている場合ではない。一週間に数回出る地元(E社以外)のスポットしか、仕事が無くなったのだから。だからと言って私もここまで来て後には引けない。中年は頑固だ、損をするが。オット、私の歳は秘密である。想像願いたい。

そのまま何ヶ月が過ぎてとうとう音を上げる会員が出てきた。すると所長は以前登場した軽運送協会のA社の人間を引っ張ってきた。会員同士で争わせ仕事の奪い合いをさせようと言う魂胆。そのために朝の仕分けを協力させるようと。チョット考えれば分かる理不尽、A社の会員もそんなにバカではない。この提案は直ぐに頓挫した。
結局、E運輸会社は時給1,000円で仕分けの求人広告を出し、我がD社の会員の中で最後まで頑張った古株二人を残して軽運送への仕事を出すのを止めた。つまり他のものはクビである。そのものたちはE社の親会社であるF運輸に鞍替えとなった。これで少しはよくなるのだろうか。

F運輸のそこの営業所はコンピューターを配送する仕事がメインである。勿論、他の荷物も扱わなければ会社として成り立たない。が、2階に綺麗で静かなフロアがあり、そこがパソコン本体とディスプレィの集積場だった。私はそこで働くことになる。家電店やパソコンショップで販売しない通販専門の世界一?(残念ながらSONYではない)売れているメーカーのPCの配送である。


★Photoは幕張にある双子のビル、ワールドビジネスガーデン。

[こんなことがあった、その17]
E社に従事していた頃、千葉県千葉市の副都心と言われるビジネス街の配達を受けたことがある。東京を回って千葉に入るコースだ。ここにツインビルと言う双子の建物がある。イーストとウエストに分かれているがここが分かりにくい。中のフロアのレイアウトがそっくりなだけではなく、各階もまたそっくり!真ん中を境に右へ行っても左に行ってもドアの作りも…唯一場所を確かめるにはドアに貼り付けてある社名のパネルだけ。しかもこれが四十数階あるのだから大変。今何階にいるのかは中央にあるエレベータの両側の表示を見る以外、方法が無い。しかし、このエレベータには業者は乗ってはいけない。これはお客用、我々配達業者はみーんな裏にある貨物用のエレベータを使うのだ。これを独り占めできれば良いが何十社という業者が一度に使うのだから待っているだけで数十分、一階上に行くくらいなら階段と言う手もあるが、大体上から下まで満遍なく荷物があるから始末に悪い。台車に山と荷を積んで運ぶので階段と言うのは辛い。しまいにどこにいるのか分からなくなる。

たとえばイーストの配達時に一つだけ間違えて、ウエストの同じ階数の荷物を持っていったら、下まで取り換える為に帰ると30分のロスになる。
そしてこれが問題なのが駐車場である。たとえこのビルの配送の車でも一時間しか停めてはならない(一般車と同じ扱い)。入り口にゲートがあって、これが機械式。人間なら数分のオーバーを勘弁してもらえても、相手が機械の場合は言い訳がきかない。後は有料になる。配達に時間がかかるだけでなく、車の駐車時間も気になるので神経を使う。行ったり来たりとチョット笑えるかもしれないが、本人は大変。もし、一時間をオーバーする場合、有料にするのを嫌うなら1回表へ出て入りなおすとまた一時間無料、だがその間に駐車場の空きが無くなったら路上駐車することになり、駐車料どころではない罰金を払う覚悟をしなければならない。一時間って誰が考えたのだろう。

ビジネス街の配達は分かりやすく結構簡単に思えるが、車を停める場所や荷物の管理に見た目より気を使う。駐車中に商品を盗られる恐れもあるし(いちいち施錠などしていられない)、軽運送の路上駐車の場合、大手運輸会社の配送車と違って警察も甘くは見てくれないのだ。

[こんなことがあった、その18]
私の後に入ってきた新人、車も購入したぱかりでぴかぴか。シルバーメタリックの1Box、大事にしてるのは見て分かる。この人も朝の手伝いを拒否したので余り良い仕事は回してもらえなかったが、ある日仕事が出たと嬉しそうに私に話した。見ていると(私は暇してた)、パレット(すのこ状の荷物を載せる台)に、なにやら重く大きな物体。人間が数人では持ち上がらない。それを乗せるにはフォークリフトを使わなければ無理だ。ところが1Boxと言うのはフォークと相性が悪い。何故なら跳ね上げ式のリアドアは屋根と水平くらいにしか開かない(勿論、サイドドアは幅が狭くてフォークでは利用できない)。リフトのほうは荷物を持ち上げるアームが荷物をチャント奥まで載せるには短いのだ(ドアのほうが長い)。無理をすると、そのアームを支えている縦に走るフォークの支柱が車の跳ね上げたリアドアに当たる。何とかフォークで半分載せて後は人の力、数人でずらした。床のシートは引きずられボロボロに、その下の塗装も剥げてしまった。相当重いようで荷台は沈んでいる。
大変だなと思ったが何とか運べそうだ…

それから数時間が経って、彼は返ってきた。車を停めて一目散にE社の事務所へ駆け込んで行った。暫くすると、落胆した彼が出てきた。
配達先でも、やはりフォークリフトを使われたらしい、それは仕方ないにしても、その運転手が下手だった。リアドアの位置を確認しないで、荷物を下ろそうとフォークを進めたらしい。想像は出来る。「バリバリバリ」だっただろう。帰りが遅いと思ったら、歪んで閉まらないドアを叩いて、引っ張ってと元へ戻す空しい努力をしていたらしい。
そのフォークの運転手に「修理代」を要求したらしいが、その配送先の会社(客)の見解は「こんな荷物を運ぶのに軽の1Boxで来るのが悪い、運輸会社に請求しろ」だったと言う。
そのため、その新人は営業所の事務所に飛び込んできたのだ。答えは当然のごとく「そんなもの知らない」で済まされてしまったらしい。新人だからこその先方の言葉を真に受けた行動だ。当然相手に直してもらうべきだろう。私は余計なことは言わなかったが…フォークの運転手が当たらないよう配慮をすべきである。商売道具である車を壊してまで、それが仕事なんて論外だ。

私も危なかったことがあったが、その時は他の人の手を借りて半分引っ張り出してからフォークを使わせ、ぶつからないようにシッカリ誘導した。自分の車は自分で守るしかないのだ。たとえそれが相手の責任にしても注意してもらう気遣いは必要だ。

彼の車がドアを半開きしたまま帰っていき、次の日、何とか閉まる様にしてきた後姿は歪んで醜かった。修理をする収入なんてあるわけが無いのだ。それは私とて同じことだが。

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